~~エネルギーデトックスワーク協会認定上級セラピスト・1dayセミナー講師 NAMIです~~
この話の続き。
その日、私は宅直でした。
例によって日勤から引き継いだ業務を終わらせたのが夜の9時くらいだったと思います。
いつ呼び出しが来るか分からないので、急いで遅い夕飯を食べて寮に待機。
まもなくベルが鳴りました。
寮から折り返し電話をかけたところ、心外(心臓血管外科)の緊急オペが入ると。
え? 心外の緊急オペ?
夜に、心外?
…心外?
…と、一瞬パニックに。身体が震えるほどの驚きでした。
心外が最もひとり立ちまでに時間をかけて教育された…という事はそれだけ難しい科です。それを夜間に当・宅のみでやるのか…という純粋な怖さがありました。
ましてや、私はやっと弁置換術を終えたばかりでしたから。
急いで病院に戻ると、心破裂の緊急オペで、人工心肺を使うと。
人工心肺を使う時は、外回りにナースが2人必要。器械出しも、場合によっては2人入るケースがあります。
でもナースは2人。
通常、夜間は当直者が器械出しに入り、宅直者が外回りに入りますが、人工心肺を使うオペで、新人である私1人での外回りは無理との当直者(ベテラン)の判断で、私が器械出し、当直者が外回りになりました。
本来ならかなり時間をかけて手術器械や必要物品を用意し、段取りを整えて臨むべきものですが、患者さんの状態が状態なので、時間の遅れはそのまま命に直結し、文字通り一刻を争います。
あとで考えても良くあの短時間であれだけの用意が出来たと思うくらいのスピードで準備をし、足が震えるなんて言っている暇もなく、手洗いに入りました。
…でも、震えていたと思います。足。
そしてあの時ほど強烈に、ベテランナースの力量を見せつけられた事もありませんでした。
何年やったら、こんなにテキパキと無駄なく、根性据えて動けるようになるのだろうと。
あの時ほどベテランの存在を有り難く心強く思った事はありません。
ひとり立ちしたばかりで、まだ慣れていない心外の手術器械。
でも、基本は頭に叩き込んである。私だってひとり立ちしてるんだ。と、自分に言い聞かせながらも、心外の緊急手術。
ただでさえ、執刀、開胸から人工心肺につなぎ、術野を整えるまでのスピードはとても早く進みますし、オペそのものも進みが早いです。心臓を止める時間が短ければ短いほど、患者さんの心臓へのダメージは軽く済みますから。
普段のスピードよりも、更に経験のないスピードで進むであろうオペに自分がどれだけついて行けるのか、足手まといになりはしないか、それがとにかく不安でした。
でも、そんなことを言っている時ではありませんでした。やるしかない。
ついていけるか、ではなくて、ついていく、という一択なのです。
手洗いして器械やガーゼ、薬剤などの用意を進めながら別室で患者さんの麻酔がかかるのを待ちます。
今思い出しても、あの待っている時が1番怖かったですね。
しばらくして先輩が呼びにきました。
手術室に入り、麻酔側も人工心肺側も術野も、あっという間に整えられていく。
早い、早い、早い、早すぎる。
これが心外の緊急オペというものか。
だけど、これについていかなければ。
器械出しがモタモタしていたから救命出来なかったなんて、絶対誰にも言わせない。
そんな感じで、本当に、ただただ、ひたすらに必死についていきました。
少し余裕ができた時、気管内挿管(手術中、呼吸管理のための管を気管に挿入すること)から一体どれくらい経っていたのかもわかりません。
開胸が済んで人工心肺が繋がった後あたりでしょうか。
助手のドクターのひとりが、「次はこれ(器械など)がいくよ」とサポートをしてくれたおかげもあって、何とか流れについてもいけていました。
外回りに目がいく余裕が出てくると、いつもの輸液・輸血量よりもはるかに多い量が使われているのがわかりましたし、薬剤も同様でした。
一晩中オペに入り続け、朝になってようやく日勤帯に引き継ぎをしました。
外回りの申し送りが聞こえましたが、輸液量はケタがひとつ違っていたことを覚えています。
前日の日勤からほぼ24時間を超える勤務になったため、引き継ぎでカウントを終えた時にはもう、緊張を維持するのが限界に来ていました。
(ちなみにそんな中でもカウントは外回りと協力の上、術中にも何度かしていました)
さすがにその日は休みにしてくれて、家に帰りました。
新卒で入って数ヶ月でしたあの強烈すぎる経験が、仕事上でその後の自分に大きく影響したのは言うまでもありません。
これでもかと見せつけられた、新人の自分とベテランナースとの大きな差。ベテランの頼もしさと腹の据わったさまと、あの判断力。あの緊急時に新人のサポートまでこなせる経験の質と量。
きっと私は、あの時のあの先輩を目標として経験を積んでいったのだろうなと。
実際、未だにあの先輩の顔を思い出します。
そして初めにあれほどの経験があったからこそ、少々の事では(仕事では)動じることがなくなったのだろうなと。
本当は小心者でビビりなんですけどね(笑)
少なくとも仕事では、あれが原点となって腹の据わった自分を創り上げていったのだと思います。
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