もう10年ほど前のドラマになります。
終戦記念のドラマで、「歸國」というドラマ。
沖縄へ向かっていた途中で、撃沈された輸送船(?)に乗っていた英霊が、2010年8月15日の日本に、65年ぶりに1晩だけ戻ってくる、というもの。
東京駅に降り立った英霊たちは、それぞれ行きたいところへ帰って行きます。
学徒動員で出征し戦死した学生の子を身籠り産んで、戦後の混乱期に苦労して女手一つで育てた(年老いて人工呼吸器を装着して意識が無い)母。
その母を病院に預けたまま、最期まで顧みなかった、成功者になった息子。
その息子=自分の甥に、
「なあ君。君の母のシワは、君には醜く見えるのかもしれない。でもそのシワは、君を育てるために、生かすために刻まれたシワだ」
といった大宮上等兵。ビートたけしさんが演じていました。甥を石坂浩二さん。その母親で、大宮上等兵の妹役に小池栄子さん。
自分の代わりに妹の人工呼吸器を止めた少女の背中に「ありがとう」と礼を言い、息絶えた妹の亡骸に取りすがって男泣きする大宮上等兵。
その後、甥を手にかけてしまい、大宮上等兵は仲間のところへも行けず、あの世にもいけず、永久にこの世を彷徨うことに。
東京駅で解散したあと、故郷に帰り、母の遺影を見て「かあちゃん」と泣き、現代の日本(の人間)を見て
「こんなに豊かになってまだ不満なのか!」
と叫んだ上官。長渕剛さんが演じていました。
恋人を置いて戦地に行き、亡くなった、音楽学校(現在の東京芸大)の学生を小栗旬さんが演じていました。
恋人役には若い頃を堀北真希さん、亡くなった彼が帰ってきた時の、歳を重ねた恋人を八千草薫さんが。
「君は、ひとりで幸せだったのか」
と、涙ながらに彼女(八千草薫さん)の頬を包み込んでいました。彼女は失明していましたが、彼の存在を感じ、言葉も交わすことが出来ました。
あとは、(お節介な)ナビゲーター役に生瀬勝久さん。
罪の意識に耐えきれず、気がふれて首を吊り自殺した検閲係の兵士は、英霊の中に入れてもらえず、靖国神社の前で毎日毎日、自らが取り上げた(届くことのなかった)手紙を読み続けていました。
他にもいくつかのエピソードがありました。
一晩だけ帰ってくることを許された英霊たちは、再び東京駅に整然と集まり、また、元いた暗い海の底に帰って行きます。
そこで、人気のない、穏やかな、天気のいい夜にだけ海面に浮かんで、故国を、家族を、子孫を思うのだと。誰かがそんなようなことを言っていたと思います。
あのドラマを見て、もしかしたら、こういう事ってあるのかも知れないなと思ったものです。
あの大戦で亡くなったかたは、今の世の中を見てなんと言うのかなと思います。
確かに豊かになった。
でも、何かがおかしいと思う世の中にもなった、そう私は思ってしまう。
今更昔のような生活は現実的じゃない。
だけど、人はいろんな意味で、後ろ向きに進んでいるように思えてならないのです。
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